1. 2025年度建築奨学生研修旅行の実施

2025年度建築奨学生研修旅行の実施

本財団建築奨学金事業に付随して、以下のとおり、2025年度建築奨学生研修旅行が実施されました。

・参加者 2025年度建築奨学生9名

・訪問地 スペイン、ポルトガル、モロッコ

・期間 2026年2月21日~3月6日

・建築奨学生による企画趣旨

サンティアゴ・デ・コンポステーラ、ポルト、モロッコの三地域を巡る旅は、大西洋を軸に歴史的文脈と現代建築が交錯する都市空間を学術的に観察するための必然的行程である。

三地域はいずれも大西洋に面し、宗教的、交易的、文化的な接点として発展してきた歴史を持つ。その都市構造や歴史建築は、現代建築が地域に介入する際の文脈を形成しており、過去と現在の対話を理解するうえで不可欠である。

サンティアゴ・デ・コンポステーラは、ロマネスク・ゴシック様式の大聖堂や修道院群が都市骨格を形成する巡礼都市である。現代建築の代表例であるピーター・アイゼンマンの「ガリシア文化都市」は、幾何学的な配置と抽象的形態によって歴史的文脈に挑戦しつつ、都市空間の再編を行っている。石造や石畳の歴史的素材に対し、コンクリートやガラスを用いた現代建築は、視覚的コントラストと空間的緊張を生むと同時に、巡礼路や広場の公共性を補完する機能を持つ。この介入は、過去の建築に対する「尊重」と「批判的再解釈」を両立させるデザイン思想の典型であり、歴史都市における現代建築の可能性を示している。

ポルトでは、アルヴァロ・シザやソウト・デ・モウラの作品が、伝統的石造建築と現代的素材の対話を通じて都市に新たな層を形成する。シザは住宅や公共施設において、石材や白漆喰、木材といった地域的素材を継承しつつ、光の導入や空間の連続性によって現代的体験を提供する。ソウト・デ・モウラの建築では、スケールと質感の対比を通じて歴史的街並みに緊張と調和をもたらし、都市の物語性を拡張する。また、レム・コールハース設計の「カサ・ダ・ムジカ」は、曲面と直線を組み合わせたダイナミックな形態とガラスファサードによって都市景観に斬新なアクセントを加え、大西洋都市の開放性と国際性を建築言語として可視化している。

モロッコにおいては、伝統的なメディナの中庭空間や迷路状の路地、イスラーム幾何学装飾が都市構造の基盤を形成する。その文脈において、現代建築は素材・形態・空間構成の点で地域文化との対話を試みる。カサブランカやラバトの美術館、文化施設では、コンクリート、ガラス、スチールを用いた現代建築が、伝統的な装飾や内向的空間と融合し、都市に新たな公共性を生み出している。現代建築は単なる装飾的引用ではなく、光や視線の制御、動線設計、素材感の対比を通して、都市の歴史的文脈に応答する役割を担っている。

この三地域を結ぶ大西洋は、単なる地理的海域ではなく、宗教的境界、交易回廊、グローバル化への門戸として都市と建築の文脈を媒介してきた。サンティアゴの歴史都市に挿入された抽象的形態、ポルトの伝統的街並みに重ねられたモダンな施設、モロッコのメディナに接続する現代文化施設はいずれも、建築を通じて過去と現在、地域性と国際性をつなぐ装置として機能している。

本企画は、三か国の現代建築を比較・分析することを通じて、「地域的文脈との対話」「歴史的都市における現代建築の挿入」「素材と空間構成の継承と更新」というテーマを明らかにすることを目的とする。歴史と現代が折り重なる都市空間を体感的に理解し、現代建築の思想と手法を具体的に分析することは、今後の設計・研究・教育に資する重要な知見となるだろう。

・旅程
2/21 東京・羽田空港発
2/22 ポルト着
2/23 ポルト
2/24 ポルト
2/25 サンティアゴ・デ・コンポステーラ
2/26 サンティアゴ・デ・コンポステーラ
2/27 サンティアゴ・デ・コンポステーラ
2/28 カサブランカ
3/1    フェズ
3/2   トドラ渓谷
3/3   アイット=ベン=ハドゥ
3/4   マラケシュ
3/5   カサブランカ
3/6   東京・羽田空港着

・主な視察先


サンティアゴ・デ・コンポステーラ大聖堂

 


ガリシア文化都市

 


SGAEセントラルオフィス

 


サンタ・マリア教会

 


ポルト大学

 


ボウサの集合住宅

 


カサ・ダ・ムジカ

 


ポルト大聖堂

 


フェズ旧市街

 


トドラ渓谷

 


アイット=ベン=ハドゥの集落